2026年FIFAワールドカップ本大会の開催地、アメリカ、カナダ、メキシコ。そのうちの2カ国と本番の地で対戦するアメリカ遠征は、アジア最終予選を終えたサッカー日本代表にとって、新たなサイクルの始まりを告げる重要な2連戦です。
私が考えるに、この遠征は単なる親善試合ではなく、9ヶ月後に迫った本大会へのリハーサルであり、チームの現在地を測る試金石です。森保一監督率いるサムライブルーが、世界の強豪を相手にどのような戦いを見せるのか、その全てを徹底解説します。
2026年W杯への試金石|アメリカ遠征の重要性

今回のアメリカ遠征は、2026年本大会に向けた準備の幕開けとして、非常に重要な意味を持ちます。これは本番の舞台で行われる戦略的な偵察任務であり、ドレスリハーサルに他なりません。
本大会の地で戦うアドバンテージ
森保一監督が「本大会を想定した中でいろいろなことができる」と語るように、この遠征は物理的なシミュレーション以上の価値があります。長距離移動や時差への順応はもちろん、本大会開催国のスタジアムでその国の代表と対戦することは、本番の雰囲気を肌で感じる絶好の機会です。
ワールドカップという大舞台の未知のプレッシャーを事前に経験することで、精神的なアドバンテージを築くことができます。これは、本大会が始まる前に優位性を築こうとする、極めて戦略的な一手です。
アジアとは異なる試合強度への挑戦
この2連戦は、試合の強度という点でも新たな次元への挑戦となります。FIFAランキングで日本(17位)を上回るメキシコ(13位)とアメリカ(15位)との対戦は、アジア最終予選とは比較にならないほどのプレッシャーに晒されることを意味します。
日本がアジア以外の国と対戦するのは2023年10月以来です。現在のチームの実力を測る上で、これ以上ない試金石となる2試合です。
発表された招集メンバー25名を徹底分析

森保監督が選んだ25人のメンバーは、明確な意図を持った構成です。確立されたスター選手、復帰組、そして期待の新戦力が融合し、チームの戦術的な可能性を広げる試みが見られます。
森保監督が掲げる「勝利と成長」の両立
今回のメンバー選考について、森保監督は「現段階で考えられるベストなメンバー。勝利を目指すことと、さらなるチームの成長を考えて選んだ」と語っています。この言葉は、「勝利」と「成長」という2つの目標を同時に追求する監督の姿勢を明確に示しています。
その中心には、遠藤航選手や三笘薫選手、板倉滉選手といった欧州のトップリーグで活躍する選手たちがいます。彼らはチームの戦術的な柱であり、ピッチ内外でのリーダーシップが期待されます。
E-1選手権からの抜擢がもたらす化学反応
特に注目すべきは、2025年7月のE-1選手権で優勝したチームからの選手の融合です。安藤智哉選手や望月ヘンリー選手といった選手たちが名を連ねました。
これは結果を残した選手に報いると同時に、チーム内の競争を活性化させる明確な戦略です。ベテランの長友佑都選手の招集は、経験豊富なリーダーシップをチームに還元する狙いがあります。
激化するポジション争いと戦術の柔軟性
招集メンバーを見ると、いくつかのポジションで激しい競争が予想されます。例えば中盤では、遠藤航選手、佐野海舟選手、藤田譲瑠チマ選手といった異なる特徴を持つ選手たちがおり、組み合わせによってチームの戦術は変化します。
背番号の割り振りも興味深いです。堂安律選手が再びエースナンバーの10番を背負い、久保建英選手が20番に戻ったことは、攻撃の中心として期待される彼らの役割を示唆しているのかもしれません。
背番号 | 選手名 | ポジション | 所属クラブ |
23 | 早川 友基 | GK | 鹿島アントラーズ |
---|---|---|---|
12 | 大迫 敬介 | GK | サンフレッチェ広島 |
1 | 鈴木 彩艶 | GK | パルマ・カルチョ |
5 | 長友 佑都 | DF | FC東京 |
25 | 荒木 隼人 | DF | サンフレッチェ広島 |
4 | 板倉 滉 | DF | アヤックス |
3 | 渡辺 剛 | DF | フェイエノールト |
22 | 瀬古 歩夢 | DF | ル・アーヴル |
2 | 菅原 由勢 | DF | ヴェルダー・ブレーメン |
16 | 関根 大輝 | DF | スタッド・ランス |
6 | 遠藤 航 | MF/FW | リヴァプールFC |
14 | 伊東 純也 | MF/FW | KRCヘンク |
8 | 南野 拓実 | MF/FW | ASモナコ |
15 | 鎌田 大地 | MF/FW | クリスタル・パレスFC |
7 | 三笘 薫 | MF/FW | ブライトン・アンド・ホーヴ・アルビオンFC |
19 | 小川 航基 | MF/FW | NECナイメヘン |
11 | 前田 大然 | MF/FW | セルティック |
10 | 堂安 律 | MF/FW | アイントラハト・フランクフルト |
9 | 上田 綺世 | MF/FW | フェイエノールト |
18 | 町野 修斗 | MF/FW | ボルシアMG |
21 | 佐野 海舟 | MF/FW | マインツ05 |
20 | 久保 建英 | MF/FW | レアル・ソシエダ |
24 | 細谷 真大 | MF/FW | 柏レイソル |
26 | 望月 ヘンリー | MF/FW | FC町田ゼルビア |
13 | 鈴木 唯人 | MF/FW | SCフライブルク |
17 | 藤田 譲瑠チマ | MF/FW | FCザンクトパウリ |
27 | 佐野 航大 | MF/FW | NECナイメヘン |
強敵との2連戦|試合の見どころと展望

今回の遠征では、特徴の異なる北中米の強豪2チームと対戦します。それぞれの試合で、日本代表の異なる側面が試されることになります。
宿敵メキシコ|過去の雪辱を果たせるか
アメリカ遠征の初戦は、日本にとって厳しい挑戦となるメキシコ戦です。この一戦は、日本の攻撃陣が真の決定力を身につけたかを問う、重要な試金石となります。
試合情報と視聴方法
- 対戦カード|日本代表 vs メキシコ代表
- 日時|2025年9月7日(日) AM11:00 キックオフ
- 会場|オークランド・コロシアム(アメリカ)
- 視聴方法|U-NEXTでライブ配信
- 月額プラン会員または「サッカーパック」加入者は追加料金なしで視聴できます。
- 試合終了後からサッカーパック加入者は1年間、それ以外の方は72時間見逃し配信があります。
過去の対戦成績
日本代表にとって、メキシコは「天敵」とも言うべき存在です。過去の対戦成績は日本の1勝4敗と大きく負け越しており、この心理的な壁を打ち破れるかが焦点です。
直近の対戦は2020年で、前半に数多くの決定機を逃した日本が、後半に2失点を喫して敗れました。優勢な時間帯に試合を決めきる「決定力」が、今回も勝利への鍵を握ります。
日付 | 大会 | スコア(日本 – メキシコ) |
1996年5月29日 | キリンカップ | 3-2 |
---|---|---|
2000年2月5日 | カールスバーグカップ | 0-1 |
2005年6月16日 | FIFAコンフェデレーションズカップ | 1-2 |
2013年6月22日 | FIFAコンフェデレーションズカップ | 1-2 |
2020年11月17日 | 国際親善試合 | 0-2 |
共催国アメリカ|進化する相手に優位性を示せるか
メキシコ戦から中2日で迎えるアメリカ戦は、対照的な物語を持つ一戦です。近年の成功体験を背景に、進化し続ける相手に対して優位性を保てるかを試す戦いとなります。
試合情報と視聴方法
- 対戦カード|日本代表 vs アメリカ代表
- 日時|2025年9月10日(水) AM 8:37 キックオフ
- 会場|Lower.com フィールド(アメリカ)
- 視聴方法|U-NEXTで登録不要の無料配信
- 事前特番と72時間の見逃し配信も無料で視聴できます。
- 無料配信終了後から1年間は「サッカーパック」加入者のみ視聴できます。
過去の対戦成績
メキシコとは対照的に、日本はアメリカに対して過去3度の対戦で2勝1敗と勝ち越しています。この事実は、チームに自信を持って試合に臨むための良い材料です。
直近の対戦は2022年で、日本は2-0の完勝を収めました。しかし、ワールドカップ共催国として強化を進めるアメリカが、2022年の敗戦を徹底的に分析してくることは間違いありません。日本の戦術的な適応能力が試されます。
日付 | 大会 | スコア(日本 – アメリカ) |
1993年3月14日 | キリンカップ | 3-1 |
---|---|---|
2006年2月10日 | 国際親善試合 | 2-3 |
2022年9月23日 | 国際親善試合 | 2-0 |
まとめ|W杯への軌道を定める2連戦

このアメリカ遠征の真の価値は、2試合の最終スコアだけでは測れません。森保監督が掲げる「勝利、選手層、戦術の幅を広げること」という多角的な目標に照らし合わせて、その成果を評価する必要があります。
E-1選手権で活躍した選手たちが世界の強豪相手に通用するのか、そしてチームは試合中に戦術を修正する柔軟性を示せるのか。私が思うに、この遠征は日本の新たなチームアイデンティティを形成する触媒となる可能性を秘めています。この2試合は、サムライブルーが2026年FIFAワールドカップで頂点を目指す上で、正しい軌道に乗っているかどうかを示す、最も明確な指標となるでしょう。